2012年に第2次安倍政権が発足し、2009年3月にはバブル後最安値となる7054円になるなど低迷していたい日経平均株価が、2015年5月は20563円まで大きく回復するになりました。
そして、2011年は一時期1ドル75円まで高騰した円高が、2015年には1ドル125円まで下がりました。
これは一重にアベノミクス第一の矢である「金融政策」つまり、日銀の量的緩和のおかげ、と説明されることがよくあります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
どうして、量的緩和が円安や株高をもたらしたのか、について今回は説明したいと思います。
- 為替について勉強したい
- アベノミクスについて理解を深めたい
- これから為替がどうなるのか?気になっている
という人は是非この記事を読んでください!アベノミクスの1つ量的緩和で何が起きたのか?がわかると思います。
量的緩和政策とは
2013年4月4日に黒田東彦・日本銀行総裁のもと、銀行などの金融機関が持つ国債を大量に買い入れ、銀行などが日銀に開いている当座預金口座の残高を増やし、2年間でマネタリーベースを2倍に増やす計画を発表しました。
ここで、マネタリーベースとは、「日本銀行が世の中に供給したお金の総量」のことを指します。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値です。
ここから、市中の国債がどんどん日銀に買われていき、現在でのその流れは続いています
ドルが欲しい日本の企業や銀行
基本的な日本の状況として、企業はバブル崩壊後の日本の低成長・消費増税などによるデフレによって、なかなか内需による収益増の機会を見いだすことができていません。
そこで景気の良い米国や東南アジアなどに収益を求めて進出していく傾向があります。そのためには、海外に工場をつくったり、お店を出店するなどの投資をする必要があります。
海外では、日本の円でのままでは支払いができないことから、日本円を銀行でドルに両替する必要があります。
つまり、日本の中ではドルの需要が高まっていました。
通貨スワップ取引によってドルを調達
日本の銀行がドルを企業などに貸し出す場合、当然ですが、どこかからドルを調達しなければいけません。
この時に銀行は通貨スワップと呼ばれる取引をすることで、手元の円資金を貸出し、日米の金利差(現在は米国の方が高い)を支払うことによってドルを調達できます。
ここで、通貨スワップとは、他国のお金を直接借りると、金利が高くついてしまうので、自国のお金を借りて、そのお金と他国のお金を交換する取引のことをことを言います。
通貨スワップについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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ベーシススワップスプレッドとは
前述の通り、日銀は国債を買うことで、日銀当座預金を増やしたことで、そのお金が余っているような状況でした。
一方で、アメリカは逆にテーパリングといって、FRBが国債を売ってドルを買い上げる政策を行っていたために、ドルの量が減っている状況でした。
結果として、ドルの需要が円の需要よりもはるかに強くなるという状況になっていました。
そこで、スワップ取引をするには、日米の金利差に上乗せして割高な上乗せ金利を支払う必要が出てきていました。
この金利上乗せ分のことは「ベーシススワップスプレッド」や「ドル調達コスト」と呼ばれます。単に、円とドルを交換するだけでなく、日本の銀行は大きく金利上乗せ分を支払わくてはならない状況でした。
キャリートレードで利益を得る海外の投資家
海外の投資家からすると、通貨スワップ取引をすることでドル資金を日本の銀行に貸し出すことで得られるドルの金利に上乗せして「ベーシススワップスプレッド」の分まで金利が貰えるので、非常に有利な運用を出来るというわけです。
もちろん、借りた円の金利は支払わなくてはいけませんが、円の金利はとても小さかったので、差額で大きく利益をえることができます。
なお、このような金利差を活かして利益を得ることを一般的に「キャリートレード」と呼びます。
国債高、株高へ
調達した円資金をそのままにしていてもあまり金利はつかないので、上昇を続ける(=金利は低下している)日本国債の買いを行うことで一段と良い運用ができます。
日銀による量的金融緩和が続く中では、日銀が国債を年に80兆円も買い続けますので、国債価格に下値不安は少なく、上昇を続ける(=逆に金利は下がり続けます)と見込めるためです。
そして実際に下記にあるように日本国債価格は大きく上昇を続けています。これがマイナス金利なのに海外勢が日本国債を買う理由です。
そして、得た円の利益でドル買うことで、ドル高円安の圧力が高まり、異常な2015年までは大きく円安に振れることとなりました。
当然ながら、どんどん円安にするという流れが決まってしまえば円建ての日経平均株価もあがるし、輸出系企業の株価もあがる。だから外国人は、円を売りながら抱き合わせで日本株を買い、国債も買っていった。
円安、株高の陰り
ところが、2016年あたりから円安の力で株価も押し上げ、一時的には「日経平均採用銘柄は」業績があがり続けましたが、それも限界だろう、とみなされだしたということです。もう日銀はたらふく国債を買った後です。価格も上がりすぎてしまいました。
いい加減、借りていた円が返済され、買いすぎた株が売られる展開になったのです。
従いまして、現在まで過度な円安は落ち着き、日経平均も2万円前後で落ち着いているとい状況が続いています。
まとめ・コロナショックの影響
今回は、アベノミクスの一環として行われた量的緩和と円安、株高への影響について整理しました。
さて、この記事を書いている2020年5月現在、コロナショックによって、世界的に経済への大きな影響が懸念されています。
当然、為替や株価にも影響があり、今後も大きな変動が懸念されています。
今後を予想するにあたり、過去の出来事を理解しておくはとても大事です。
是非、この機会に学んでみるのも良いと思います。