2020年現在、「コロナショック」が世界を遅い、大きな混乱が起きています。
今後世界がどうなるのか?とても不安だと思います。
そこで、これを機会に2009年に発生した「リーマンショック」を振り返ってみるのはいかがでしょうか?
- サブプライムローンとは?
- モーゲージ債とは?
- CDOとは?
- CDSとは?
- ゴールドマンサックスやドイツ銀行の戦略とは?
- なぜ、AIGは助かったのか?
などについて、今回はいっしょに学んでいきましょう。
サブプライムローンとは?
住宅を購入する際に、多くの方がローンを組みます。
ローン審査に合格した場合、金利の低い「プライムローン」を組むことができます。ここで、プライムとは日本語で「優良」という意味です。
「サブプライムローン」とは、この「プライムローン」の審査に合格できなかった方向けのローンのことです。
どのような人が「プライムローン」の審査に通らないかというと、例えば
- 既に、借り入れが所得に対して50パーセント以上
- 過去1年間に30日間を超える延滞が2回以上ある
- 過去5年以内に破産したことがある
のような条件に当てはまるような場合 です。
このような方は、「プライムローン」を組むことができません。
その代わりに「サブプライムローン」を借りて、住宅を購入していました。
「サブプライムローン」は一般的に住宅購入当初の2、3年間は低い固定金利が適用され、返済がしやすいのですが、そのあと金利が大幅に上がる仕組みのものが主流でした。
当時の米国では住宅価格が上昇しつづけていました。
そのため「払えなくなったら家を売ってしまえばいい」という気楽な考えで、「サブプライムローン」を組んで住宅を購入する人が後を絶ちませんでした。
サブプライムローンを元にしたモーゲージ債とは?
「モーゲージ債」とは、住宅ローンを担保として発行される債券のことを指します。
ここで、「モーゲージ(mortgage)」とは、「抵当権」のことです。
「モーゲージ債」とは、簡単に説明すると、住宅ローンの返済金を受け取る権利を売り買いできるように証券化されたものです。
もしも、住宅ローンの返済が滞ってしまった場合でも、住宅を売却したお金が返ってくることから、安全性が高い債券として知られていました。
通常、このサブプライムローンを元にしたモーゲージ債はあまり高い信用が得られる債券ではありません。
しかし、CDOを駆使することで、格付会社の評価を最高ランクまで高めることができました。
CDO(債務担保証券)とは?
CDO (Collateralized Debt Obligation:債務担保証券)とは、発行の裏付けとされる資産が複数の社債や複数の企業向け貸付債権(ローン債権)である証券のことです。
Collateralizedは日本語で、担保にされるという意味です。
Debt は借入、Obligation は債券という意味で、整理すると、「借入が担保にされた債券」と訳せます。
CDOの特徴として、複数の債券を束ねて組み直すことによって新たな1つの債券を創ることができます。
サブプライムローンから作られたモーゲージ債を、他の債券と混ぜてCDOを発行したり、更にそのCDOを集めたCDOが創られたりしました。
このように、CDOの中身がどんどん複雑になり、そもそも、どのような借入を担保としているものなのかを正確に確認することが難しくなっていきます。
そうして創られたCDOは格付会社からも信用度が高いとされました。
また、そのCDOには金利のた高いサブプライムローンが組み込まれているため、比較的利回りも高く、米国だけでなく欧州や日本でも金融商品といして人気がありました。
格付会社(格付機関)とは?
まず、「格付け(債券格付け)」とは、政府や企業、金融商品などに対して付けられる等級のことです。
国債や社債など債券を買った人にとって、一番気になるのは、「お金がちゃんと返ってくるか?」です。
それの信用度をアルファベットで格付けすることで、返済確実にできそうな国や企業は格付けが上がり、返済能力がなさそうなら下がるという仕組みです。
「格付会社(格付機関)」とこの格付けを行う会社のことです。
格付会社は複数ありますが、一般に「S&P」や「ムーディーズ」などが有名です。
なぜ格付会社は、このサブプライムローンを含んだCDOを、高く格付けしてしまったのでしょうか?
格付会社はその名の通り、格付けすることが仕事です。
銀行などから依頼され債権などの格付けを行った際に、依頼主が望む格付けでなかった場合、他の格付会社にその案件をとられてしまう恐れがあります。
したがって、格付会社は依頼主の意向を組んで、実際よりも高く格付けしてしまうことがあったようです。
CDS(クレジットデフォルトスワップ)とは?
リーマンブラザーズ破綻のカギを握っていたのは「CDS(クレジットデフォルトスワップ Credit default swap))」と呼ばれる取引です。
CDSは一言でいうと「倒産保険」、つまり保険の一種です。
皆さんが加入する生命保険は、もしもの時に必要なお金をもらうために、毎月保険料を支払うためものです。
このようになんらか可能性の低い事象が起きてしまった際に、お金の保証をしてもらうものを一般的に保険と呼びます。
CDSは、とある会社が倒産していまったとき、つまりその会社の債券が返済不能になった場合に、保険料を払っていた人にお金が支払われるというものです。
難しそうな名前ですが、仕組みはとても単純ですね。
一般的には会社が倒産してしまった時に困る別の会社などのがこのCDSを使います。
ゴールドマンサックスやドイツ銀行の恐ろしい戦略とは?
この「サブプライムローン」の危うさに気づいていた人もいました。
ゴールドマンサックスやドイツ銀行です。また、一部の投資家の中にも気づいていた人がいました。
そこで、ゴールドマンサックスやドイツ銀行は、この「サブプライムローンを含むCDOに対する保険、つまりCDSを投資家に対して行います。
すると、「サブプライムローン」の危うさに気づいていた投資家は喜んでそれを購入し、保険料を支払います。
それは、「サブプライムローン」が返済できなくなった場合、多額の保険金を受け取ることができるからです。
しかし、このままではゴールドマンサックスやドイツ銀行は多額の保険金を支払うことになってしまいます。
そこで、次の手を打ちます。
狙われたリーマンブラザーズとAIG
ゴールドマンサックスやドイツ銀行は、今度は保険料を払う側のCDSの契約を金融機関など行います。
その金融機関にはAIGやリーマンブラザーズなども含まれていました。
AIGやリーマンブラザーズなどはCDOが返済不能となった場合、保険金をゴールドマンサックスやドイツ銀行に払わなくてはいけません。
しかし、この時、AIGやリーマンブラザーズなどは、このサブプライムローンを含むCDOの危うさに気が付いていません。
なぜなら、前述の通り、格付会社の評価はとても高かったからです。
評価の高いCDOが破綻するはずはなく、 ゴールドマンサックスやドイツ銀行からずっとCDSの保険料を受け取り続けられると考えていたのです。
ここで、AIGやリーマンブラザーズへゴールドマンサックスやドイツ銀行が支払う保険料はとても安く済みました。
これは、 ゴールドマンサックスやドイツ銀行が投資家から受け取るCDSの保険料よりも安かったため、ゴールドマンサックスやドイツ銀行はリスクを負うことなく利ザヤ(差益)を稼ぐことができました。
そして、リーマンショックが起きる
この先はご存じの通りです。
住宅価格の下落と共に、サブプライムローンを返済することができなくなり、サブプライムローンのモーゲージ債を基にしたCDOは破綻します。
そして、CDSが発動し、今まで保険料を受け取っていた金融機関は多額の保険金を支払わなくてはならなくなります。
リーマン・ブラザーズやAIGは数千億円規模の赤字を計上することとなります。
そして、リーマン・ブラザーズは再起不能の結経営破綻に追い込まれてしまいました。
そして、それに連鎖し、他の金融機関も次々に破綻します。
まるで、土地バブルは崩壊し、次々に会社が倒産した日本のバブル崩壊のようです。
米国政府は、なぜAIGを助けたのか?
アメリカ経済全体への影響を危惧した米国政府は、AIGに融資を行い、AIGはなんとか経営破綻を免れます。
この時、なぜサブプライムローンの危険を見誤ったAIGを助けたのか、不満の声がありました。
それでもなぜ、AIGを助けたかというと、それはAIGが破綻した場合の影響が大きすぎたためです。
もしAIGが破綻した場合、CDSの保険料を支払うことができません。すると、このCDSへ保険料を払っていたた投資家たちも資金を回収することができなくなり、大きく損をすることになります。
CDS市場全体のみならずアメリカ金融市場、そしてアメリカ経済全体への影響を考慮し、AIGを助けるという決定がなされました。
また、この背景には日本のバブル崩壊を研究し、その知見を活かしているともいわれています。
まとめ
今回は
- サブプライムローンとは?
- モーゲージ債とは?
- CDOとは?
- CDSとは?
- ゴールドマンサックスやドイツ銀行の戦略とは?
- なぜ、AIGは助かったのか?
などについて学んできました。
金融はとても複雑ですが、このような事例を使って学ぶほうが、理解しやすいのではないでしょうか。
是非、コロナショックを切っ掛けに、お金や将来について考えてみるのも良いのではないでしょうか?
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