先日、大学入学共通テストのとある問題がニュースになっていました。従来の出題の傾向とはちょっと異なった問題であったようで、それが、
です。
この問題について丁寧に解説した文章があまり無かったので、FPが解説してみます。
ところで、大学共通テストとは?
大学入試センター試験に代わって、2021年よりから導入されたものです。
センター試験との違いは数学や英語の試験の構成や配点が変わったもののようです。
筆者にとっては、今ではかなり懐かしい思い出になってしまいました。
大学入学共通テスト「政治経済」 第2問 問4はどんな問題?
日本銀行の公開市場操作に関する問題で、FP試験でもよく出てきますね。
買いオペレーションとは、『日本銀行が市中銀行などの市場から債券や手形を買うこと』をいいます。
「ア」は、買いオペレーションによってどのような効果が期待できると言われているのか?が問題です。
選択肢は緩和or引締ですね。
答えは金融「緩和」です。
市場金利を低めに誘導し、借り入れを行いやすくすることで、経済を刺激する効果があると言われています。
しかし、これにYさんが反応しています。
日銀が市中銀行から国債を買ったとしても、市中銀行がもつ日銀当座預金だけだと言ってます。
ここで日銀当座預金とは、簡単に言うと、市中銀行が保有する日本銀行の口座です。
たしかに、個人や一般企業のお金にはあまり関係がありませんね。
次の選択肢は
マネーストックorマネタリーベース
ですね。
ここで、マネーストックとは、個人や一般企業のお金の総量、マネタリーベースとは個人や一般企業に加えて、この市中銀行がもつ日銀当座預金も含めたお金の総量のことです。
さきほどの選択肢から、買いオペレーションによって増えるのは市中銀行がもつ日銀当座預金でしたね。
したがって、増えるのはマネタリーベースであり、マネーストックではありません。
よって答えは①となります。
大学入学共通テスト「政治経済」 第2問 問5はどんな問題?
こちらは市中銀行のバランスシートに関する問題です。
これはFP試験ではあまり見られませんね。
このバランスシートを見て、簿記などをかじった人は直観的に違和感を覚えたかもしれません。
なぜならば一般企業では貸出は負債で、預金は資産ですよね。
しかし、銀行からすると、これは逆の扱いとなります。
利子をつけて返済を受ける貸出は資産。
逆に金利を乗せなければならない預金は負債です。
この問題は銀行の貸出業務に関するものです。
銀行から見て、お金を貸すということは、貸出が増えますね。
なので資産は増えます。
しかし、同時に、個人や一般企業に貸し出したお金は銀行の預金として負債が増えます。
よって答えは④ですね。
よく見ると「メモ」の覧に答えが書かれています。
この問題のポイントは2つです。
一般的に、一般企業や個人が預けたお金を、別の一般企業や個人に貸し出していると思われていますが、
実際には異なります。
「信用創造」といって、預金は貸出によって生み出されているのです。
つまり、私たちが使っている預金も、実はだれかが借りたものだということです。
もう一つは会計学の基礎です。
だれかの資産は誰かの負債である、ということです。
これは私たちの預金も例外ではなく、私たちにとっては資産ですが、銀行にとっては負債です。
私たちの貸出は、私たちにとっては負債ですが、銀行にとっては資産です。
まとめ
今回はちょっと難しかったでしょうか?
この問題には前述の通り、会計学の基礎や、経済の基礎である信用創造の仕組みが盛り込まれていました。
私たちの感覚とは異なるので、受験生にとっては回答に悩む問題だったと思います。
ものごとは感覚的な思い込みによって間違って理解してしまうことがあり、これをじっくり観察したり考察することで、真実に近づくことが、学問を学ぶことの意義ではないでしょうか。
この共通試験を間違えたことで、経済の仕組みについて、より深く理解した学生が、4年後に社会で活躍することを願っています。
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